「パリの蚤の市」神の雫 4巻 #29

<概要>
 「蚤の市で掘り出し物の
  素晴らしい品々を
  次々と見つけ出すような
  あの快感がこのワインにはある」

 ソムリエ二次試験を受けた方なら
 この言い回しの意図がよく分かるのでは
 ないでしょうか?(笑)

 実際のワインではあらゆる香りが
 七色に輝いて出てくることは稀で、
 あるかないか程度のわずかな香りを
 強引に嗅ぎ取りに行くことの方が多いです。

 

<表現>
 "ここは...そうだ
  昔フランスにいた頃
  母さんとよく行った
  あのパリの蚤の市だ
 
  最初に目につくのは
  フルーツケーキ
  熟したイチゴ
  フランボワーズ
 
  そして柑橘系の恐らくは
  ルビーグレープフルーツの
  甘酸っぱさと爽やかな香り
 
  そしてずらりと並んだ
  古いおもちゃのような
  賑やかな複雑さ
 
  まるで香りさえ漂ってくるような
  色とりどりの花の絵皿
 
  まだ何かある
  ああ見つけたぞ
 
  この滑らかさだ
  ガラス細工のバレリーナ人形
 
  この限りなく透明に近い
  滑らかな舌触りと
  ミネラル分の硬質さはまさに..."

 

<表現の要素>
 ①最初に目につくのは
  フルーツケーキ
 ②ルビーグレープフルーツの
  甘酸っぱさと爽やかな香り
 ③古いおもちゃのような
  賑やかな複雑さ
 ④色とりどりの花の絵皿
 ⑤この滑らかさだ
  ガラス細工のバレリーナ人形

<ワインの要素>
 ①イチゴやラズベリーの香り
 ②グレープフルーツの香り
 ③香りの複雑さ
 ④花系の香り
 ⑤滑らかなタンニンとミネラル

 

<キーエッセンス>
 滑らかなタンニンとミネラル
 (=ガラス細工のバレリーナ人形)

 

<表現の着想>
 キーエッセンスは滑らかなタンニンと
 ミネラルという味わいの要素になるため、
 表現の最後に持ってきているところが
 現実的で上手いなあと感服しました。

 実際、テイスティングの順序は、
 外観→香り→味わいの順で取っていくため、
 味わいのコメントは後半になります。

 そこに至るまでの情報の取り方までもが
 表現に組み込まれており、なんとも
 完成度の高い表現に感じます。

 

<実践への課題>
 表現をテイスティングの順番に合わせて
 ストーリー展開すると、納得感のある
 表現になると思われます。

 その際、まずは色調から世界観の情景を、
 香りから情景に対する補足情報を、
 味わいで主題や結論に結び付けるように
 すると神の雫っぽい感じになりそうです。
  

<ワインの情報>
 ワイン名:ドメーヌ・フィリップ・
      エ・ヴァンサン・レシュノー・
      マルサネ
 品種  :ピノノワール
 生産者 :ドメーヌ・レシュノー
 生産国 :フランス ブルゴーニュ
 生産年 :2001年

 

<掲載巻>
 神の雫(4) (モーニングコミックス)