グルナッシュの土壌による違い (機関誌178号)

@グルナッシュの土壌による違い


*ソムリエ協会機関誌178号(P.77-81)の要点メモ。
 以下は自分の勉強のために
 箇条書きにまとめたものなので
 詳細についてはソムリエ協会に入会し、
 機関誌178号をご確認下さい。

 

【品種特性】
・千ばつに強く乾燥した気候を好む。
・早くに芽吹き遅い収穫
 ⇒リオハ:Tempranillo→Garnache、
  ローヌ:Syrah→Grenache
・果皮は薄く、顕粒は大粒
アントシアニンやタンニンの量が
 他品種(ex.シラー)より少ない◆
⇒色調は淡い◆
・糖度が上がりやすく高Alc.◆
・逆に酸は落ちやすい◆
・熟成容器は小樽〜フードルと幅広い。
 新樽での醸造は減多にない
・基本収量は多い
 ⇒水揚けのよい砂質は抑えられる傾向

 

【ワインの特徴】
・色合いはルビー〜ガーネットと幅広い
・成熟度は赤系〜黒系果実と幅広い。
・暑く乾燥した産地ではジャミー寄り
・地中海性気候ではガリーグ*
 *ドライハーブ系
  ⇒オレガノ、タイム、
   ローズマリー、ラベンダーなど
・旧世界では動物的ニュアンス
・果実味がある
・タンニンはソフトで柔らかい
・柔らかくしなやかなテクスチャ
・熟成感が早くに出る
 ⇒抗酸化作用のあるタンニンが少ない

 

【ワインのコメントまとめ】
McLaren Vale, Australia
Rioja, Spain
Priorat, Spain
Gigondas, France


【結論】
●砂質土壌⇒①④
・根が浅いところにしか張らない
 ⇒繊細さや軽やかさを感じる。
・香りは華々しくフローラル
・赤系フルーツ主体でチャーミング。
・キメの細かいしなやかなタンニン
 ⇒軽やかでエアリーなテクスチャー

●スレート土壌⇒③
・乾燥した土地の水分ストレス
 ⇒力強く疑縮感に富んだ印象。
・酸/Alc./タンニン全て突出して堅牢。
・砕いた岩のようなミネラル感

●粘土石灰⇒②
・水分を適度に含む水掘けの良い土壌
 ⇒フルーツの熟度も高く密度も高い
・たくましいタンニン
 ⇒ボリュームとストラクチャがあり筋肉質
・ミネラル感よりは濃縮した果実感が優勢
Alc.度数も一番低く柔和なテクスチャ。

●検討の仕方
・AがBより凝縮していると感じた場合、Bは
 1)太陽により凝縮された可能性
  (日照量の多さ=雨量が少ない)
 2)水捌けによるウォーターストレス
  (水分保有率が少ない土壌)
 と「天」と「地」を分けて考えるとよい。

 

【ワインの情報】
①Woodstock The Octogenarian Grenache 2016
 McLaren Vale South Australia, Australia
・小売価格3,300円(税別)
・土壌sandy
Alc.15.0%
②C.V.N.E.Contino Garnacha 2014
 Rioja, Spain
・小売価格5,500円(税別)
・土壌galets、clay
Alc.14.0%
③Project Garnachas de Espana Garnacha
 Fosca del Priorat 2017
 Priorat, Spain
・小売価格2,700円(税別)
・土壌slate
Alc.15.0%
④Famille Perrin Gigondas La Gille 2017
 Gigondas Vallée du Rhóne,France
・小売価格4,500円(税別)
・土壌sandy
Alc.14.5%

 

【産地の情報】
①MCLAREN VALE、AUSTRALIA
気候区分:海洋性気候(RegionⅡ)
標高  :50〜250m
土壌  :砂質(Semaphore Sand)
産地特性:地中海性気候
     多様なマイクロクライメット
     平坦地と丘陵地では特徴が異なる。
     海に近い
     サンヴィンセント湾からの涼しい風
降水量 :180mm(生育期間時)
醸造  :醸造果皮と共に発酵古樽にて熟成

②RIOJA(ALAVESA)、SPAIN
気候区分:大陸性気候(RegionⅢ)
標高  :300〜700m
土壌  :小石の多い粘土石灰質
降水量 :約300〜600mm
産地特性:海洋性から大陸性
     多様なマイクロクライメットが存在。
     平坦地と丘陵地では特徴が異なる
醸造  :発酵前に低温漫漬
     天然発酵
     400〜500Lの仏樽で14カ月熟成

③PRIORAT、SPAIN
気候区分:大陸性気候(RegionⅣ)
標高  :100〜900m(このワインは310m)
土壌  :スレート(リコレリャ)
降水量 :4O0〜600mm
産地特性:夏が長く著く乾燥。
     寒暖差が激しい
     真夏は最大40度
     夜温が落ちる(10度以下)
醸造  :仏産小樽で10カ月

④GIGONDAS、FRANCE
気候区分:大陸性気候(RegionⅢ)
標高  :600m。北西向き。
土壌  :砂質
降水量 :約400 mm〜
産地特性:モンミライユ山系の麓に位置
     ジゴンダス村のみがAOC
     場所によって土壌が異なる
     ⇒小石混じりの砂質~粘土
醸造  :フードルと小樽にて1年熟成

 

【コメント総括】
〇外観・香り
・砂質土壌の①④の色調が他より濃い
・砂質土壌は赤系果実の特徴が顕著
・粘土石灰やスレートでは
 黒系果実が強くなる傾向あり
・砂質は根が浅く張る
 ⇒水分供給がしやすく
  ブドウも適度な水分を保てる
 ⇒味わいもジューシーでスムース、
  エアリーでふわっと軽やかな印象に

〇酸とAlc度数
・砂質土壌を捉える一番の要因は
 タンニンの感じ方とキャラクター。
・砂質土壌の①④は女性的。
 ⇒特に軽やかでキメが細かいタンニン
・礫/粘土②やスレート③は男性的*
 ⇒スレートはタンニンが骨格となる。
 ⇒礫/粘土は力強さを感じるタンニン。
  ⇒栄養を保持しやすい環境による
 *生産者のスタイルや気候風土で異なる

〇タンニン
・土壌の違いで
 タンニンの質や熟度への影響が変わる。
プロアントシアニジン
 果皮と種子に存在し、
 ストレス具合で影響が異なる。
 ⇒砂質土壌
  根が表土に近いところで栄養を求め、
  重心は高く軽やかできめ細いタンニン
 ⇒礫/粘土
  栄養分を多く含む土中で種子が成長。
  線が太く厚みのあるタンニンに。
 ⇒スレート
  水分が少なく根が高ストレス環境下で
  種子に栄養を送るので、重心は低く、
  硬質的で級密なタンニンとなる傾向。

〇ボディとテクスチャ
・砂質土壌では、
 繊細でサラサラとしたタンニン
 織密な酸の質感
 全体的に透明感を感じさせるような
 軽やかなテクスチャーを与える。
・対照的にスレート(リコレリャ)は
 濃縮したフルーツの熟度の高さと
 力強いエネルギッシュな味わいを与る
・礫が混じる粘土石灰質では
 密度の高い骨格が豊かで筋肉質な質感。


【英語表現(参考)】
・Straight forward(率直)
・Fragrant(芳醇)
・Heat sensation(ロ中に含んだ時のAlcの強さ)
・refreshing sensation(若干の青さがある花)
・mouth-coating(コーティングするタンニン)
・sandy(砂状のタンニン)
・dusty(細かい粒子のタンニン)
・fleshy(完熟したフルーツ等の、肉厚な食感)
・broad(広がりのある味わい)
・cooked(火を入れたような香りのニュアンス)
・dense(密度の高さ)
・gamay(動物的な香り)
・grainy(粒状のような質感のタンニン)
・chewy(含有量豊富で噛み締めるようなタンニン)
・sturdy(逞しい骨格)
・subdued(抑制された控えめな印象)
・layered(多層で複雑性を持つ)
・Rustic(酸味の程度?
・Reminiscent(酸味の程度?
・energetic(力強い凝縮感とエネルギーに溢れる)
・generous(完熟したフルーツのコクある味わい)
・Flamboyant(スミレやラベンダー等の華々しさ)
・perfumed(香水のような香り)
・Powdery(きめの細かいパウダリー)
・subtle(緻密で繊細な)
・airy(ふわっとした軽やかな印象)
・supple(キメの細かいしなやかなタンニン)
・robust(酸Alcタンニンが全て突出して堅牢)
・muscular(ボリューム感と骨格があり筋肉質)

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